役の行者の岩窟

養老寺は、養老元年( 717年)役小角による開創といわれ、本尊の十一面観音は行基菩薩の作と伝えられています。真言宗智山派の寺院で、御手洗山を背にした境内には薬師堂、石窟閼伽水(あかみず)、独鈷水もあります。里見八犬伝では、この岩窟に伏姫がお参りしたことを次のようにあらわしています。「伏姫は三歳になるまで物言わない子であり、心配した母は霊験あらたかといわれる洲崎明神の別当、養老寺にある役行者の岩窟へと伏姫を参拝させた(洲崎は安西領なのでお忍びで)。その帰り道、不思議な老人に百八つの玉(そのうち八つが仁義礼智忠信孝悌の文字が浮きでた数とりの大玉)でできた数珠をもらう。実は役行者の示現であった。この時以降、伏姫は口をきくようになり、すくすくと育った。」とされています。