富崎地区 布良

自慢の神輿
たてやま おらがんまっち 富崎地区・布良

地域の紹介

青木繁が描いた「海の幸」
青木繁が描いた「海の幸」

房総半島の最南端、平砂浦の端に位置し、古の昔、阿波忌部族の上陸地とされる「駒ケ崎」、その東方には「祖神天太玉命」を祀る男神山、「后神天比理刀命」を祀る女神山が聳えます。男神山には平成二十年まで布良鼻灯台が有り、航海安全を守ってきました。
江戸時代には「押送船」で鮮魚を江戸に送るルートが確立され、江戸との交流が盛んに行われ、布良崎神社境内には日本橋蔵屋敷より石灯籠が奉納されています。

小谷家
小谷家

明治の頃には鮪延縄漁が隆盛を極め、銀行や遊戯場、湯屋などが並び、二家に一軒は店だったと言われるほど、日本一人口密度が高い地区でした。
港の沖合は漁種の豊富な布良瀬「鬼瀬」と呼ばれます。海で亡くなった亡霊が赤い光になって輝いていると伝承されるカノープス「布良星」も有名です。また、水産改革の実践や「内村鑑三」にも影響を与えた「富崎村長神田吉右衛門」、神社や漁港再建に尽力した「富崎村長満井武平」などを輩出しました。また、明治期の画壇に大きな影響を与えた青木繁がこの地に滞在して描いた「海の幸」は、国指定重要文化財に指定され、滞在先の「小谷家」は館山市指定文化財としてこの度、ノーベル賞を受賞された大村智氏らのご尽力により保存、公開されます。

阿由戸浜と青木繁記念碑
阿由戸浜と青木繁記念碑

ドラマ「ビーチボーイズ」のロケ地になった「阿由戸浜」からは、右手に伊豆半島越に「富士山」が、左手に「大島」その間に、空が朱く染まる夕陽がしずむ頃、正に絶景が見られます。

自慢の神輿

自慢の神輿 大天皇と呼ばれる大神輿の制作年代は不明ですが、彫刻は国分の彫工・後藤喜三郎橘義信の作です。房総一の重量と言われる台輪4尺の大天皇と呼ばれる神輿、「歯を食いしばる」ほどの気合を入れて、力自慢達が担ぎ出します。
十五年位前までは、担ぎ棒は今より左右4尺短く、一人の肩に重さがずっしりと掛かり、かなりきつかったと長老達は語ります。

檜の丸太で組んだ担ぎ棒
檜の丸太で組んだ担ぎ棒

現在の担ぎ棒は、三芳の山に入り檜を数十本目当てをし、水気の少ない時期に切り出してきて、3年ほど寝かせた物を使っています。
明治の頃には、今の大天皇よりさらに一回り大きな神輿があったそうです。

●屋根:延屋根一直線型 ●蕨手:普及型
●造:塗神輿 ●露盤:桝型
●舛組:五行三つ手 ●扉:四方扉
●鳥居:明神鳥居 ●台輪:普及型
●台輪寸法:4尺 ●彫刻師:後藤喜三郎橘義信
●制作年:不明
●他:昭和57年、平成21年に修複

房総一の重量と言われる大天皇
房総一の重量と言われる大天皇
後藤喜三郎橘義信による彫刻
後藤喜三郎橘義信による彫刻


布良崎神社

館山市布良大字西本郷三七九
布良崎神社
●祭 神 : 天富命天富命
建速須佐之男命
金山彦命
●例祭日 : 七月十九日、二十日
●本 殿 : 高床神明造
●鳥 居 : 神明鳥居
●神 紋 : 五七の桐
●宮 司 : 藤森益樹
●氏子数 : 布良地区二百十五戸
●責任役員 : 嶋田博信
●由 緒 : 祭神天富命、武皇の勅を奉じて沃土東方に求むべく、四国の忌部を率いてこ房総に地至り、即ち此布良一角を駒ケ崎と称す。駒ケ崎の東方海岸に聳ゆる二峯あり、海岸近きを男神山、他を女神山と称す。男神山に祖神天太玉命「安房神社」、女神山に御后天比理刀咩命「洲宮、洲崎神社」を祀る。命はこの本郷の地を出発点として現在の安房神社に祖神天太玉命を祀り、漸次開拓の歩を勧められ北上し、特に麻穀の播殖を奨励。亦建築並びに漁業の技術をも指導され、衣食住の神として崇敬厚い社なり。

漁師が伊豆から運んだ石を積み上げた石垣
漁師が伊豆から運んだ石を積み上げた石垣
神社拝殿から望む霊峰富士山
神社拝殿から望む霊峰富士山

自慢の祭

昔名残の姉さん衣装も見られる
昔名残の姉さん衣装も見られる

毎年6月の終わりから、神社清掃、花つくりが始まり、祭り前日区民総出で、大幟立て、提灯枠取付けを行います。
祭り当日、古式に倣い神職の祓い儀の後、拝殿に於いて楽人が奏でる音色の中、巫女舞を始めとする神事が粛々と進められます。
午後より、子供達による小天皇の担ぎ出しが始まり、夕刻、須佐之男命を奉った大天皇が威勢よく宮出し、明治の画家「青木繁」も見たであろう行列「今は人も減り行列は縮小」が浜へと向かい、空が茜色に染まり、神輿が夕陽に当たり輝く頃、浜で祭典が挙行され、終わると担ぎ手達は、姉さん被りに姉さん化粧、艶やか長襦袢姿に変わり、お宮へと向かいます。担ぎ瘤が破けて血だらけになり、女の人に白粉(おしろい)を塗って貰うのも一つの自慢だったそうです。
昔は人も多く、神田町、本郷、向と地区別に競う合うように担いでいました。
神社拝殿より、二の鳥居と、一の鳥居を重ね合わせて見ると、ちょうど真ん中に「霊峰富士山」が見えるよう創られている神社、安房を開拓した忌部族を彷彿される祭祀です。

区民総出で立てられた大幟
区民総出で立てられた大幟
厳粛な祭典が行われる
厳粛な祭典が行われる
威勢のいい神輿渡御
威勢のいい神輿渡御
その昔の布良崎神社祭礼の姿を描いた 「布良崎神社御浜出行列の図」 (布良崎神社所蔵 近藤博 画)
その昔の布良崎神社祭礼の姿を描いた 「布良崎神社御浜出行列の図」 (布良崎神社所蔵 近藤博 画)


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館山市富崎地区 布良(表面) 館山市富崎地区 布良(裏面)

このパンフレットは、地域の方々からの聞き取りを中心に、さまざまな文献・史料からの情報を加えて編集しています。内容等につきましてご指摘やご意見等ございましたら、ぜひご連絡いただき、ご教示賜りたくお願いいたします。