語り「おじいさんとたぬき」

(平群・吉井の大井戸のお話)
昔々、房州のある村に、平吉というおじいさんが住んでいました。
おじいさんの家の前には、小さな川が流れていて、おじいさんが若い頃に作った水車が大きな音を立てて回っていました。
明るい月夜には毎晩平吉おじいさんをからかいにくる者がいました。古くから山に住んでいるいたずら好きの狸です。
あまりにいたずらが過ぎるので、たおじいさんは、この狸を捕まえてやろうと考えるようになりました。
ある日、晩飯の支度をして待っていると大きな狸が家の中に転がりこんできました。
狸は追い回すおじいさんの目をくらまして、家の中のどこかに隠れてしまいました。
しかし機転を利かせたおじいさんにより、大きな古狸は捕まりました。
狸を捕まえたおじいさんは晩飯を食べようとしましたが、側で腹をすかしている狸を不憫に思ってご飯を少し分けてあげました。
今でも平群の冨山のふもとには、日照りにも枯れない仁王の涙と有名な吉井の大井戸があり、おじいさんの水車を模した小さな小屋が建てられています。