西岬地区 香

地域の紹介

 鏡ヶ浦の南に位置しする地区で、「香」と書いて「こうやつ」と読み、そのいわれは昔、谷のほうから良い香がしたからではないかと言い伝えられており、現バス停の標識名には「香谷」と書かれています。また、平城京跡で発見された奈良の都へアワビを運んだ荷札にも、香の語源と思われる「賀宝(かほう=かほり=かおり)」という地名と、「塩海(しおみ)」という地名が書かれていました。
 市の指定文化財になっている応永八年(1401)の宝篋印塔(ほうきょういんとう)、里見の出城と伝承される「要害」、室町時代の作と考えられる金剛寺にある「如意輪観音像」、今もはっきりと痕跡が見られる旧海軍航空隊の「掩体壕跡」などが残る歴史深い地区です。
 海水浴客が多かった昭和の頃までは民宿も多く、漁師も大勢いましたが、今は少なくなり長閑な風景が広がる、百世帯ほどの人々が暮らす海沿いの地区です。

自慢の神輿

房州後藤流三代後藤義光の彫刻
 香の神輿は昭和五年(1930)に製作された白木の美しい神輿で、富浦の宮大工により製作され、飾りは北条長須賀の滝川錺師によるものです。そして、神輿本体には千倉町の房州後藤流三代目後藤義光による彫刻がところ狭しと施されています。特に「神武天皇東征の図」などの胴羽目に施された彫刻は、どれも神輿本体から飛び出して来るような厚彫りの見事なもので、三代後藤義光の代表作ともいえる彫刻です。
 神輿の重量はおよそ米俵9俵(約540キロ)と言われ、白木の大きな屋根には金に染められた桜紋が輝きます。
 平成三年(1991)には行徳・中台にて大殿神輿の大修理が行われ、同時に子供神輿も奉製されました。そして平成十二年(2000)には、大殿神輿奉製七十周年記念が行われています。
 祭礼日には白木の屋根に光る大きな「桜紋」が、夏の陽射しに照らされ誇らしげに揺れる自慢の神輿です。

房州後藤流三代後藤義光の彫刻
●屋根:延屋根 ●方形:普及一直線型
●蕨手:普及型 ●造:白木
●露盤:桝型 ●棰:棰
●胴の造:二重勾欄 ●桝組:五行三手
●扉:前後扉 ●鳥居:明神鳥居
●台輪:普及型 ●台輪寸法:三尺五寸 
神武天皇東征の図
●制作年:昭和五年 ●制作者:富浦の宮大工
●彫金:長須賀・滝川 ●彫り物:三代目後藤義光

浅間神社

香 浅間神社
千葉県館山市香字稲荷森九八三
●祭神 木花咲耶姫命 (このはなのさくやびめ)
●宮司 酒井昌義
●例祭日 毎年七月十五日

●由緒
 神社入り口には、寛政十三年(一八〇一)に地元の弥惣兵衛が奉納したと刻される手水石が残っています。

海岸へ向かう参道にある浜鳥居
 浅間神社下から海岸へ向かう参道には、浜鳥居が置かれ、そこには文政十年(一八二七)に奉納された石灯籠が立っています。
 また、裏山山頂にある奥の院の手水石には、天保十一年(一八四〇)の文字が刻まれています。
 拝殿の中には元禄時代に修復したとされる木札がも残っており、江戸時代中期からの深い歴史がうかがわれます。
 毎年、五月三十一日の早朝に、氏子たちが男道、女道とに分かれて浅間神社を参拝し、御三幅の掛け軸を拝みの御本尊として「お富士講」が今でも連綿と行われています。

自慢の祭

香海岸の渡御
 「浅間神社」と書かれた大幟が浜鳥居参道の両脇に立てられると、香の祭礼が始まります。
 昔の香の祭礼は、七月十四日に祭典と宵祭を行い、十五日が本祭、十六日には納めが行われ、三日間にわたり祭礼が行われており、十七日に御霊返しを行っていました。
 当時は大殿と中殿を擁し、きらびやかな装束に兜をかぶった天狗やおかめを先導役にたてて行列をなし、西岬地区見物の海南鉈切神社まで渡御し、香、潮見、浜田、 見物の4地区とで合同祭礼が執り行われたこともありました。
浜鳥居の前の参道を抜けて海辺へ
 その当時に立てた大幟はじめ、神輿行列に加わったと思われるおかめの面や衣装なども、現在、神社境内にある旧集会所でにて大切に保管されています。
 香の現在の祭礼は、青年団員からなる「香会(かおりかい)」が中心となって準備から神輿渡御までを執り行っています。少子高齢化などの影響により、神輿の担ぎ手も子ども少なくなりましたが、手伝いの人たちを入れておよそ50~60人の人たちによって、午後一時から夕方までの時間に神輿渡御が行われます。
大切に保管されている昔の衣装など
 昔ながらの神輿唄をとぎれることなく唄いながら、はじめに浜鳥居を抜けて、その後は町内各家を隈なく回ります。その神輿渡御の姿は、昔と変わらぬ伝統を継承した、香の風景に溶け込んだ自慢の祭です。

くまなく地区内を巡行する大神輿
大神輿と小神輿

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館山市西岬 香(表面) 館山市西岬 香(裏面)

このパンフレットは、地域の方々からの聞き取りを中心に、さまざまな文献・史料からの情報を加えて編集しています。内容等につきましてご指摘やご意見等ございましたら、ぜひご連絡いただき、ご教示賜りたくお願いいたします。