32番 小網寺(こあみじ)

金剛山小網寺 【真言宗】 聖観世音菩薩
ご詠歌「はるばると のぼりてみれば小あみ山 かねのひびきにあ(明)くるまつかぜ」
県道86号線、岡田口バス停から暫(しばら)く歩いて小網坂と呼ばれる急坂を登ると小網寺である。小網坂右手の谷は法華谷(ほっけやつ)と呼ばれる行場(ぎょうば)で、弘法大師も修業したと伝わる「やぐら」がある。仁王門をくぐり苔むした石段の上が観音堂で、聖観音像(市指定文化財)が祀られている。観音堂の左側には、お堂が元禄大地震の倒壊から復興なった記念に建てられた宝篋印塔(ほうきょういんとう)がある。下の本堂(本尊:不動明王)向拝(ごはい)にある安房の名工後藤義光が刻んだ彫刻は見事。小網寺は古くは大荘厳寺(だいしょうごんじ)と呼ばれ和銅3(710)年の創建、密教道場として安房の高野山といわれるほど栄えた。鐘楼(しょうろう)の梵鐘は国の重要文化財で鎌倉の名工物部(もののべの)国光(くにみつ)の作。伝説に、この鐘は海中から出現して平砂浦(へいさうら)に打揚げられ、撞(つ)いてみると響きが「小網寺へ」と聞こえたので寄進したとされ、平砂浦の布沼(めぬま)には鐘搗(かねつき)塚という地名があると言う。鐘の音はご詠歌にも詠まれている。