夏場の夜には、海底の「ワタリ蟹」が海面に浮上して、ウミホタルを掻き分けるようにして横泳ぎします。刺激を受けたウミホタルは、青白く発光します。「タマ網」漁は、これを目印にして舟を接近させ、「タマ網」を上からかぶせて捕獲します。最盛期には、バンリョウ籠(竹籠)で5~6籠も獲れました。戦時中に当時の漁師達が、空襲の中、命がけで漁に出ることもありました。「タマ網」漁は、昭和20年代の前半で衰退していきました。「刺し網」漁は、夜間、海底の砂地を動き回る「ワタリ蟹」を刺し網を使って獲りました。館山桟橋や北条桟橋の沖合いに夕方までに仕掛け、翌朝、日の出前に目印のブイを引き寄せ、網をたぐりつつ、蟹を引き上げました。シャコ、コチ、舌平目、バイ貝などもひっかかりました。ウミホタルが、蟹の甲羅の中に入り込み、中身を食べつくして殻だけにしてしまうことも珍しくはありませんでした。また網にかかったワタリ蟹を外すのがとても難しく、足を折ってしまうと値が下がってしまうので、慎重に作業が行われました。「刺し網」漁は、昭和30年代の前半で衰退していきました。