30番 養老寺(ようろうじ)

妙法山観音寺(通称:養老寺) 【真言宗】 十一面観世音菩薩
ご詠歌「かんのんへ まいりて沖をながむれば のぼりくだりのふねぞ見えける」
洲崎灯台を過ぎると左手に御手洗(みたらし)山が道際までせまってくる。中腹には洲崎神社が望め神社のすぐ手前が観音寺で、子育て保育園が併設されている。ここ洲崎(すのさき)は東京湾の入口で、内房と外房の境目でもある。当寺の開祖は役行者(えんのぎょうじゃ)とされ、養老元(717)年の創建。本尊の十一面観世音菩薩は洲崎神社の本地仏(ほんじぶつ)であり、神社の社僧も勤めていた。堂の左奥には役行者の霊力で湧いた独鈷水(とっこすい)があり涸(か)れることがないという。右上の岩屋には役行者の石像が祀られ、里見八犬伝では役行者の化身が伏姫(ふせひめ)に仁義礼智忠信孝悌の文字が浮かぶ数珠を授ける名場面に登場する。観音堂の向拝(ごはい)彫刻は後藤義光の師匠・後藤三四郎恒俊(つねとし)の作。境内にある一本すすきや綿鍋(わたなべ)家伝説など、洲崎神社も含めて頼朝伝説が数多く残されている。