なぜ館山には地元野菜を使うお店が多いの?

 地産地消というスローガンがあります。その名の通り、各地域で生産、水揚げされた農水産物を地域内で消費する営みを指していますが、実はここ館山では、独自の地産地消推進企画が立ち上がっていること、ご存知ですか?
合言葉は、「じのもんが一番ダッペエ」!人気の館山市マスコットキャラクターの目印が市内至る所に見られるようになりました。地産地消ガイドブックも完成!地元産品を扱っている71店舗が紹介されています。今回は、この大々的な動きに焦点を当てて、館山が一層オリジナリティ溢れる街へと向かう様子を追ってみたいと思います!

じのもんが一番ダッペエ

(2012/02掲載:H)

地産地消とは?

「地産地消」は、もともと農村部の食事における栄養素のバランスを改善するために80年代に産まれた言葉のようですが、その後バブルの崩壊による安価な輸入産品の流入・食の安全性・地球温暖化・高齢化などなど、深刻な問題が叫ばれるようになって再び、その意義が尊ばれるようになったスローガンです。地産地消を推進することで期待される効果はさまざまで、地域ごとに取り組み方が異なりますので画一化できませんが、大きくまとめると以下のようなことが想定されています。

①安全で新鮮な農水産物の消費
②流通コストの削減=CO²排出量の削減
③特色ある農水産品による観光業の活性化
④高齢農家さんを応援できること
⑤農と生活の親近感を高めること

地産地消と従来の流通経路との比較
地産地消と従来の流通経路との比較

これまで高度経済成長期に形成された流通網によって大市場が作られ、安定した食糧供給が可能になった日本ですが、その反面、生産者と消費者の物理的・心理的距離が急速に離れたことが指摘されるようになりました。そうした中、安全性に深刻な問題を抱える輸入品の流入なども相まって、何らかの対策が必要となったわけです。今ではスーパーに並ぶ商品にも産地などの表示がなされ、消費者が選択できるようになっています。
しかし、より気遣いなく安心して毎日の食事を摂取したいもの。そこで注目されたのが「地産地消」なんですね。流通のコストが減るため、エコを実践しながら通常よりも安く購入することができ、輸送時間を経ないためにとっても新鮮で栄養価の高い食事を摂取することができます。しかも上に列記したように、このことが地域内の顔の見えるコミュニケーションを活性化させて、平均年齢65歳を超える農家さんを応援することにも繋がり、なおかつ地域の特産をアピールすることもできます。これは一石二鳥ならぬ、一石万鳥(言い過ぎか…)の意義深い取り組みであることがどんどんわかってきたのです!地産地消、奥が深いですね。

館山市の地産地消

こうした中、館山市もこの取り組みに向けて着々と準備を進めてきました。それではこのことに詳しい館山市農水産課の荒井毅課長にお話しを聞いてみましょう。

館山市農水産課 課長 荒井毅さん(2012年の取材時)のお話

館山市農水産課長 荒井毅さん
「館山市では、平成22年度から地産地消についての本格的な取り組みが始まり、地元でとれた農水産物を地元で消費して、一次産業に関わる地元の農家さんを盛り上げていこうと企画を進めてまいりました。また食育という観点もあります。館山で育った子ども達が、将来他の地域へ行った時に地元の野菜や魚を自慢できるように、しっかり地元の味を知るということも大事なことです。こうしたことが郷土を愛する心につながって欲しいという思いがあります。」

館山市 地産地消推進店ガイドブック
「しかし、御存知のようにその後日本は大震災を被ることになります。南房総全体でも観光も含め風評被害で多大な損害を受け、これはすぐにでも何か対策を講じなければならない!ということで、地産地消への動きを一層加速させて課を挙げてこれに取り組んできました。
そして完成したのが、『館山 地産地消推進店ガイドブック』です。地場産の農水産品を積極的に使用している直売所・小売店・加工食品店・飲食店・宿泊施設などを全部で71店舗掲載しています。これを基に、館山自慢の農水産物をより多くの方に知って頂いて、館山の農家さんを守っていくとともに独自性を高めていけたらと思っています。」


…このガイドブックですが、以前から耳にはしていたものの、いざ手に取ってみてビックリ!地場産の使用情報に留まらず、お薦めポイントやお店の紹介も兼ねていますので一冊で館山の海・山の幸がよくわかります。市内の各店舗で無料配布されていますので、是非ご一読あれ!(館山市農水課のホームページにてダウンロードもできます。)

さて、以上お読み頂いた方には、「地産地消」というスローガンを掲げた館山市が、一体となって農水産品の独自性を内外に広く知らしめつつあることがお分かり頂けたと思います。話題の御当地メニュー「館山炙り海鮮丼」も含め、館山の今、何かすごいことになってきていますよ!百聞は一見に如かず、一度お越しになって愉しんでみてください。
本来ならば、地産地消推進店すべてを取材させて頂きたいところですが、いかんせん71店舗を1度に回りきることはできません。
そこで今回は、館山に移住されて飲食店を構えられている2人の料理人の方に、地場産の食材を使われている理由をお尋ねしてみようということになりました。


boulangerie surje

オーナー加瀬陽一さん
オーナー加瀬陽一さん

プロフィールをお聞きしてもよろしいでしょうか?

「神奈川県出身です。高校を卒業してすぐに下北沢のパン屋『アンゼリカ』や西荻窪の『ムッシュソレイユ』で修行を積んで、何軒かお店の立ち上げに関わってきました。この時期全体で10年間ぐらいですね。27歳で館山にお店を出して、3月31日で7周年となります。」

なぜ館山をお選びになったのですか?

「もともと、父が老後ゆっくり暮らそうということで館山駅近くに土地を持っていて、かといって引っ越すわけでもなくそのままになっていたのです。住んでみると温かくてとっても住みやすい場所なので、館山でお店を出そうということに決めました。」

店内に並ぶ焼きたてパンたち
店内に並ぶ焼きたてパンたち

館山の食材を使ってみてどうでしょうか?

「やっぱり朝採りの食材を使うことができるのは大きいと思います。
今だとイチゴが旬ですが、館山には季節ごとに旬な食材がたくさんありますので、それに合わせて商品構成をしていくのも一つの楽しみです。先月まではカリフラワーを使ってみたり、これからはそら豆を使ってメニューを作ってみようかなぁなどと考えています。」

館山産の野菜やスイーツを使ったこだわりパン
館山産の野菜やスイーツを使ったこだわりパン

「また年間を通して地元神余の卵を使って生地を作っていますが、こちらも放し飼いの元気な鶏から生まれた大変ヘルシーな卵でとっても美味しいんですよ。」

いちごタルト
いちごタルト

オススメの一品を教えて頂けますか?

「この時期はやっぱりイチゴですね。イチゴのタルトとデニッシュなどなどご用意してますので、濃厚なイチゴの甘味とのコラボレーションを是非ご堪能ください。」


restaurant oosawa

オーナーシェフ 大澤善次郎さん
オーナーシェフ      大澤善次郎さん

プロフィールをお聞きしてもよろしいでしょうか?

「料理を始めるきっかけになったのは、幼少の頃に父母が仕事でいなかったので学校から帰ってきた兄弟の夕飯を作っていたことでした。そうこうしているうちに母の作る料理がどのように作っているのかを一度で当てるこができるようになって…母に『あんたみたいな子は料理人にでもなってしまいなさい』などと言われ、本当になってしまったわけです(笑)。」

レストラン大澤 外観
レストラン大澤 外観

「20代に、代官山の小川軒ほかいくつかのフレンチレストランで修業を積んだ後、銀座のフランス料理店の料理長をしておりました。93年に東京で自分のお店をオープンし、その後2009年に館山に移住して『レストラン大澤』をオープンして今に至ります。」

ある日のグルメコース
ある日のグルメコース

なぜ館山をお選びになったのですか?

「都会での空気で喉を痛めたので、いずれ空気の良い自然環境の中でと思っていたんです。また都心に親戚がみんないるものですから、東京から近いというのも大きかったですね。湘南なども素敵な場所で悩みましたが、こちらの方が落ち着いてゆったりしていると感じ移住してきました。」

レストラン大澤 店内
レストラン大澤 店内

館山の食材を使ってみてどうでしょうか?

「食材はやっぱり好いですね。野菜などは特に、3つか4つお店を回って仕入れにいきますが、どれもしっかりした味をしていて新鮮です。ただ、野菜も魚も、地元で買えば地場産と思うのは間違いで、地元の良品を置いている信頼できる場所を探すことは必要かと思います。そうして辿り着くと、東京にいた時に仕入れたレベルの美味な食材がお値段安く仕入れられます。また、ハーブなどはすべて自家製で、昨年植えた桃も小さいながら美味しく育っています。」

牛タンの赤ワインソース煮と牛フィレ肉のステーキ旨味と風味の燻煙香り焼き
牛タンの赤ワインソース煮と     牛フィレ肉のステーキ旨味と風味の燻煙香り焼き

オススメの一品を教えて頂けますか?

「レストラン大澤では、野菜はほぼすべて地場産の野菜を使っており、地産地消でオススメのメニューというとなかなか選びがたいですが、4時間以上煮込み、やわらかくコクと旨味のある『牛タンの赤ワインソース煮』は人気が高いです。また『牛フィレ肉のステーキ旨味と風味の燻煙香り焼き』もリーズナブルなランチスタンダードコースに入っておりますので、是非ご賞味ください。」

店舗情報

ブーランジェリースルジェ
ブーランジェリースルジェ

ブーランジェリー・スルジェ店舗情報

TEL:0470-23-1077
住所:千葉県館山市北条2416-22
営業時間 8:00~19:00
定休日 日曜
アクセス JR内房線館山駅西口より徒歩1分
館山自動車道富浦ICより車で約10分
https://www.instagram.com/b.surje/


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レストラン大澤
レストラン大澤

レストラン大澤店舗情報

TEL:0470-28-1035
住所:千葉県館山市神余4359-56
別荘地東虹苑内(東虹苑入口を入り約800m / 南総文化ホールから車で約9分です)
営業時間
ランチ  11:30 ~13:30(LO)
ディナー 17:30 ~20:30(LO) 要予約
定休日 水曜日・第2火曜日
http://www.oosawaz.com/


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