海の町たてやま。
初夏から夏にかけて館山の海岸では数々のイベントが開催され、
海と人とが直接触れ合うためのきっかけづくりにひと役買ってくれています。
これらのイベントには海での遊び方のヒントが盛りだくさん。
夏を控えた今、館山の海とビーチについて考えてみました。
(2012/06掲載:K)
館山の海はイベントが盛りだくさん!
6月に入り、館山にもいよいよ夏の足音が聞こえてきました。市内にある6つの海水浴場では毎年7月中旬から下旬にかけて海開きを迎えますが、それに前後してビーチではさまざまなイベントが開催されます。
日付順に追ってみますと・・・(下記は2012年開催状況)
6月16日(土)~17日(日) |
---|
OCEAN+FEST TATEYAMA(オーシャンフェスタ館山) |
7月1日(日) |
たてやま海まちフェスタ |
7月28日(日) |
館山わかしおトライアスロン(通称タテトラ) |
6月24日(土) |
北条・沖ノ島・波左間(はさま)海水浴場オープン |
7月15日(日) |
オープンウォータースイミング ジャパンオープン2012 館山 |
7月15日(日)~16日(月) |
第22回館山オープンウォータースイムフェスティバル |
7月21日(土) |
船形・那古・新井海水浴場オープン |
7月29日(日) |
第46回鏡ヶ浦横断遠泳大会 |
8月8日(水) |
館山湾花火大会 |
9月9日(日) |
第3回平砂浦コースタルフェスタ(サーフィン大会) |
いかがでしょう? 6月中旬から9月上旬まで、イベントがぎっしりと詰まっていますね。特に7月は毎週末何かしらのイベントがあり、これに大小さまざまな祭りが加わりますので、夏の館山はおまつり一色になるのです。
なぜこんなにイベントが多いの?
こんなにイベントが多いのは、館山の海岸線がさまざま表情を持っているというのも理由のひとつになっているようです。たとえば、船形、那古、北条、新井海岸は鏡ヶ浦に面しており、強い西風が吹かない限り1年を通して波が穏やかです。海岸線には駐車場やトイレなども整備されているので、海水浴以外にもさまざまな楽しみ方が可能です。
沖ノ島は砂州によって本土とつながった無人島で、砂州の両側が海水浴場となっています。島そのものは磯で囲まれており、スノーケリングてサンゴや熱帯魚を見ることもできます。
波左間や坂田など西岬地区の海岸は、砂浜と磯が混在しているので海水浴のついでに磯遊びも楽しめます。こちらも波は比較的穏やかで、外海にも近いため海の透明度も高く、海岸ではビーチコーミングなども楽しめます。
そして洲崎から相浜にかけての海岸線が平砂浦海岸。こちらは遊泳禁止ですが、サーフスポットとして知られています。夏ともなれば多くのサーファーが訪れ、雄大な景観と波を楽しんでいます。そして相浜にも海水浴場があります。それほど大きくないものの目の前には伊豆大島や富士山を望むことができ、こちらも磯遊びが可能です。
このように館山の海岸にはそれぞれ個性がありますが、多くのイベントが行われるのは北条海岸や新井海岸など、館山駅からも比較的近い場所にあるビーチです。そして、夏のシーズン到来を告げるイベントがOCEAN+FEST TATEYAMA(以下オーシャンフェスタ館山)。今回はこのイベントに注目しながら、館山のビーチの魅力を考えてみたいと思います。
海を身近に! 館山サーフクラブの思い
このオーシャンフェスタ館山をプロデュースしているのは、館山の8つの海水浴場のパトロール業務をこなしてくれているTATEYAMA SURF CLUB(以下館山サーフクラブ)の皆さんです。「館山スポーツ大使」でもある飯沼誠司さんも所属する団体で、今回は飯沼さんとともにこのクラブを立ち上げた、理事の佐藤和伯(さとうかずのり)さんに話をお聞きすることにしました。
クラブが発足するきっかけとなったのは、2004年の夏に佐藤さんたちが館山の海水浴場のパトロール業務を任されたことにあります。それまでは館山のことをほとんど何も知らなかったそうですが、ひと夏過ごしてみるとそのポテンシャルの高さに驚いたといいます。ポテンシャルとは海の透明度や海岸線の雰囲気、そして開放的な空気感など。館山の海を気に入った佐藤さんたちはその翌年、クラブを発足することになります。
もともとライフセービング競技などを通して日本はもちろん世界のビーチを転々としていた佐藤さんたちが活動のヒントにしたのは、オーストラリアの海だったといいます。オーストラリアでは、海そのものが日本とは比べものにならないぐらい市民の生活に浸透している様子を目の当たりにしました。たとえば、海は市民活動のフィールドのひとつとして確固たる地位を築いており、そのベースとしてのクラブハウスがあるなど海を楽しむための施設の充実ぶりに驚いたそうです。そんな思いがあったうえでの館山との出会い。最初に館山で過ごした翌年、館山サーフクラブが発足し、やがてオーシャンフェスタ館山というイベント開催へとつながっていきます。
オーシャンフェスタ館山のヒントは、ハワイで行われているオーシャンフェスティバルというイベントでした。これはホノルルで行われているもので、大会期間中は市内いたるところでさまざまな催しが開かれ、海岸では各国ライフセーバーたちのレースが開催されていたそうです。
オーシャンフェスタ館山からビーチ遊びの楽しみ方を探る
ではここでオーシャンフェスタ館山の内容について見ていきましょう。まず、このイベントは大きく分けると3つのクラスからなっています。まず最初にエリートの部。これは海や水に関わる「アスリート」たちの戦いで、佐藤さんや飯沼さんも親しんできたライフセービング競技の選手やトライアスリート、水泳選手などが集まり、いわゆる「海のNO1」を決めるというもの。競技は男性3人、女性1人の4人一組による団体競技。ビーチを走る「ビーチリレー」、ランとスイムの複合競技である「オーシャンズサバイバル」、ハワイアンカヌーによる「アウトリガー」、ビーチで行う「ビーチ綱引き」、ラン、スイム、ボード、SUP(スタンダップパドル)の4種目による「オーシャンズリレー」など、いずれも海と砂浜をフルに使った競技ばかりで、その迫力には圧倒されます。
次に一般の部。これは市内外から広く参加者を募る大会で、「ビーチフラッグス」や「アウトリガー」、「ビーチ綱引き」「ビーチリレー」「SUP(スタンダップパドル)」「ビーチ相撲」などが予定されています。また、キッズの部では競泳オリンピックメダリストによる「スイムクリニック」や「アウトリガー」「ニッパー」などのほか、「ビーチフラッグス」、「ラン・スイム・ラン」のレースが予定されています。今年は現役の十両力士がサプライズゲストとして登場予定で、「お相撲さんと勝負!」できる催しも開かれるそう。こちらもお楽しみです。
このように大人から子どもまでが楽しめるイベントですが、この中にもビーチを使った遊びのヒントが隠されていそうです。たとえば、アウトリガーやスタンダップパドルは、特別な道具が必要にはなりますが、波穏やかなビーチでは遊ぶには最適といえそうです。また、「ビーチ綱引き」は運動会で知られる綱引きを少人数化してビーチで行うだけのものですが、足場が砂に変わるだけで一味違った盛り上がりをみせる競技に変身します。これは「ビーチ相撲」にもいえることですが、すでに競技として確立している「ビーチバレー」や「ビーチサッカー」などと同じように、今後ビーチ競技として定着するかもしれません。ほかにも、舞台をビーチに移すだけで違った趣が出る遊びもいろいろありそうです。海水浴に訪れた際には、いろいろと試してみてはいかがでしょうか。
館山の海の守り神、館山サーフクラブ
上述したように、7月中旬から順次館山市内8ヶ所の海水浴場がオープンするわけですが、その海水浴場のパトロール活動を任されているのが館山サーフクラブです。パトロール活動には、遊泳者への安全指導や監視、けが人の応急手当、人命救助などが含まれ、さらにはクリーンなビーチを目指しビーチクリーン活動なども行っています。
このクラブの趣旨は館山の海水浴場を拠点に水・海・自然が好きな人が集える総合的なクラブ作り。現在80名ほどの会員がおり、うち20名はジュニア会員で、月2回の活動を通して海や水との接し方などを学んでいます。また、ライフセービング競技にも力を入れており、一昨年は12名の日本代表選手のうち5名がこの館山サーフクラブのメンバーだったほど。また、今年度はライフセービングプール日本選手権で総合優勝するなど国内屈指のクラブといえます。
夏の海水浴場では、ビーチの大きさにもよりますが、だいたい2名~8名がチームとなってパトロール活動を行います。ひと口にパトロール活動といっても場内のアナウンスや応急手当などさまざまな要素があり、必ずしも屈強な体力や高度な技術が必要なわけではないそうです。クラブのメンバーのほとんどは館山市外在住ですが、夏のパトロール活動では全体の1~2割ほどは高校生など地元のアルバイトの方が受け持っています。彼らの経験は、館山サーフクラブの活動を世間に浸透させることにもひと役買ってくれており、今後も海を愛する人がもっと増えてくれればと考えています。
館山サーフクラブが見る館山の海
発足メンバーの一人でもある佐藤さんは、この春、東京から館山へと居を移し、今後は館山での活動を本格化させていくつもりだそう。そんな佐藤さんに館山の海の印象についてお話しいただきました。
まず、上でも述べたとおり、ポテンシャルの高さはかなりのものを持っていると考えています。たとえば、館山の海岸線には多くの無料駐車場がありますが、これは他の地域ではあまり見られないほど恵まれた環境だといいます。また、北条海岸を中心とした海岸線も、他の人気リゾートビーチに負けない雰囲気をもっており、今後はさらに洗練されたものになっていくはずといいます。また、海水浴場という意味では、アクセスの関係もあってかファミリー層が多く、安心・安全、品行方正なビーチという印象が強いそう。
昨年の地震の影響を差し引いても近年ではレジャー客の海水浴場離れが進んでいることを実感しているそうですが、その理由のひとつとして海は危険なものだという認識から子育て世代の親があまり行かなくなったことが大きな原因ではと分析します。親世代があまり海と親しんでいないために子どもを海に連れて行けないのではというもので、実際のところ海のレジャーには危険が伴い、全国では毎年のように命に関わる事故が起きています。だからといって海から足を遠ざけるのはもったいない話で、こんなにきれいな館山の海の魅力が活かしきれていないと嘆きます。
今後はこれまでに培ったネットワークをフルに活用して、「海から笑顔に」を合言葉に海での遊び方、楽しみ方をより多くの人に理解していただくよう活動していくとのこと。館山の海が全国のビーチリゾートを牽引する、いつかそんな日が来るのかもしれません。
海水浴、ここに気を付けよう!
最後になりましたが、夏の海を訪れる人のためにライフセーバーとしての目線からいくつかアドバイスをいただきました。この言葉を参考に、安全な海遊びのプランを練ってみてはいかがでしょうか。
快適に過ごす |
---|
ビーチを最大限楽しむためには快適な環境が必要です。木陰などがないビーチでは簡易テントやビーチパラソルでしっかりと日陰をつくり、熱中症、日焼け対策は万全に行ってください。水分補給も忘れずに。 |
子どもから目を離さない |
日常から離れた場所に置かれたお子さんは、親が思う以上に興奮していることが多いです。ビーチでは絶対に目を離さないようにしてください。 |
飲んだら泳がない |
夏の海での冷たいビールはなんとも魅力的ではありますが、水に入るならアルコールは控えてください。飲酒してのスノーケリングはもってのほか。海の事故の多くは飲酒が一因であり、毎年多くの人が命を落としています。 |
なんだか固い話になってしまいますが、海を楽しむためには安全確保は絶対に必要です。起こりうる危険を回避するためにも、しっかりと準備して海にでかけてみてください。