さぁ夏がやってまいりました!館山の夏は祭りやさまざまなイベントで目白押し。
毎日のように熱い日が繰り広げられます。
なかでも、全国の大学生による学生フラメンコフェスティバルin館山は今年でもう19回目となります!
今回は東西18大学、約180名ものフラメンコダンサーが館山に集結するこの大イベントについて徹底レポートしていきましょう!
(2012/07掲載:H)
フラメンコとはどんな芸術?
「フラメンコ」というと大昔から存在する古い伝統芸能というイメージを持たれている方もいるかもしれませんが、実は芸術として華々しく開花したのは19世紀のこと。それでは初めに意外に知られていないフラメンコという舞踊について少しおさらいしてみます。
フラメンコ成立の舞台はスペインのアンダルシアという地方です。ただ芸術形式として確立したのが19世紀であったとしても、その背景には脈々と連なる歴史が存在します。ここですべてを紹介することはできませんが、ざっくりとみてみましょう。
【イベリア半島の民族史】
①先住民族イベリア人、ケルト人、バスク人などによる定住
↓
②ローマ人支配によるキリスト教文化の受容(グレゴリオ聖歌)
↓
③イスラム系民族のベルベル人(モロ人)によるイベリア半島征服にてオリエント化(アラブ音楽)
↓(711年~1492年まで)
④北インドを起源とする移動民族ロマの定住
↓
⑤モロ人とロマ人との文化的音楽的な融合が進み、フラメンコ誕生
スペインの本土となるイベリア半島は、ヨーロッパの中でも時の権力者による国土争いの攻防が多く行われてきた地です。まずはヨーロッパ全域に大帝国を現出させたローマによって支配され、この中でキリスト教の音楽が伝わります。
その後ローマ帝国が解体すると、中近東のイスラム教文化がベルベル人(モロ人)の手によって流入しますが、彼らは同時に音楽的な資質に優れた民族でした。現地にある音楽と彼ら特有の音楽とが長い年月をかけて融合し、フラメンコの土台ができあがります。
フラメンコの成立に決定的な役割を演じたのは、北インドからユーラシア大陸を西へ西へと大移動していたロマと呼ばれる民族です。彼らは別名ジプシーとも呼ばれています。15世紀のレコンキスタ(国土回復運動)にてキリスト教勢力がイスラム国家を駆逐し、ベルベル人(モロ人)が国外追放を受けた後、このロマ民族がベルベル人(モロ人)の音楽文化の継承者となり、独特のリズムや踊りを混ぜつつフラメンコを芸術形式として定着させるに至るのです。
このように概観すると、フラメンコはオリエントやインドの民族によるアジア色の強い音楽・舞踊であることがわかります。こうした点も我々日本人に親しみやすい理由なのかもしれませんね。
第19回 全国大学フラメンコフェスティバル in 館山 2013
話を館山に戻しますと、ここ館山では稀にみる一大フラメンコイベントが開催されているのは冒頭で記した通りです。それではひとまずどんなイベントなのか、今年の日程を見てみましょう。
中里ワークホームライブ
日時:8月7日(水) 19:40~20:10
会場:中里ワークホーム納涼祭
主催:中里ワークホーム
※雨天の場合は8月9日(金)に順延
にっぽん丸ライブ
日時:8月8日(木) 13:30~14:00
会場:客船にっぽん丸ドルフィンホール
主催:館山市客船等歓迎委員会
※当日の天候により、中止となる場合があります。
花火とフラメンコ
日時:8月8日(木) 開演 18:30 終演:20:45
会場:八幡海岸特設ステージ(館山シーサイドホテル前)
主催:館山商工会議所青年部
※当日、雨天・荒天の場合は中止です。
館山市では毎年8月8日に館山湾花火大会が開催され、約1万発の花火が夜空を彩ります。大小の花火が一斉に100発以上も打ち上げられる特大スターマインに加え、海面に扇状に開く水中花火は迫力満点です。特設ステージでは、情熱的なフラメンコ舞踊が披露されます。
敬老ライブ
日時:8月9日(金)
会場:館山市内の介護老人保健施設 4箇所
主管:全国大学フラメンコフェスティバル実行委員会
※関係者のみ観覧することができます。
イオンタウン館山フラメンコライブ
日時:8月9日(金) 17:30~19:00
会場:イオンタウン館山 セントラルコート
主催:全国学生フラメンコ連盟・イオンタウン館山
全国から集まったフラメンコダンサーの学生さん達は、館山にて8月7日から5泊6日の合宿を行います。その中で練習もさることながら、上記のスケジュールにて館山の至る所で、フラメンコのショーを見せてくれるんですね。まさにフラメンコウィークといっていいほどの白熱した日々を繰り広げてくれることでしょう。残り3週間にせまってまいりました!楽しみですね!
なぜ館山にフラメンコダンサーが集まるのか?
さて、そろそろ本題に入っていきます。
これほどまでに大きく持続的なイベントが開催されるに至った経緯について調査してみると、第一回開催当時の発起人、当時商工会議所青年部で活躍されていた市川久夫さんをご紹介頂くことができました。
市川さんからその当時のお話しを伺ってみましょう。
当時市川さんはどういったことをなされていたんですか?
「私はその当時、地域開発委員会の委員長を務めておりまして、南房総フェスタというイベントに携わっていたんです。南房総フェスタというのは、平成元年に館山市制50周年を記念して始まったイベントで、国際的な民族音楽を奏でるイベントでした。」
その中で改めてフラメンコフェスティバルが立ち上がったのはどうしてでしょうか?
「もともと館山には碇山奈奈(いかりやまなな)さんなどといったフラメンコの大御所の方をお呼びしてショーが行われていましたので、フラメンコに親しむ土壌がありました。ただ、こうしたことが果たして街おこしに繋がっているのかという疑問があったんですね。」
「そこで、何か中長期的に取り組めて、もっとみんなで楽しむことのできる企画はないものかと思案しました。
そんな中生まれたのが、大学生のサークルに呼びかけてフラメンコの一大祭典を開きたいというアイディアです。折しも、当時館山はスペインのアンダルシア地方に気候やロケーションが似ていることから南欧風リゾート地を地域振興の柱に掲げ始めた頃でしたので、並々ならぬ情熱が湧き起ったんですね。」
「さっそく大学に問い合わせてみると、4大学16名のダンサーの方が快諾してくれまして、南房総フェスタの前座で出てもらったんです。これが予想を超える好評でして続けていって欲しいとの声が高まり、このアイディアの手応えを実感しました。
当時フラメンコの全国大会みたいなものはどこもやっていなかったので、他の地域に真似される前にしっかり銘打っておかねば…、ということで『全国大学フラメンコフェスティバル』を立ち上げることになったんです。」
今年で19回目、どのようにしてこんなに大きくなったんですか?
「そうですね、初めは花火の音と反響して場所選びに必死だったり、定着するまでに時間もかかりましたが、回を重ねるうちに館山の風物詩のように語られるようになって非常に嬉しかったです。
何より一回目を催してからすぐに学生さん達の手によって『関東学生フラメンコ連盟』が出来上がり、館山がそうした結び付きのきっかけとなってくれたことはイベントに携わった冥利に尽きました。今では、この合宿に参加する学生から日本フラメンコ界の新人賞をとるのが恒例となってきており、フラメンコ界の中でも合宿そのものの意義が高まってきています。
もちろん館山が市をあげて応援していることもありますが、学生さん一人ひとりの方に本気で楽しんでもらえること、このことがフラメンコフェスティバルの最大の原動力になっているんじゃないでしょうか!」
毎年夏になると自身の仕事に手がつかない程に、このフラメンコフェスティバルに思いを注ぎ込んできた市川さん。もう少しで20周年を迎える館山フラメンコフェスティバルについて20周年イベントをやることができたらと、ウキウキした表情でお話し下さいました。
夏のフラメンコを毎年楽しみにしている方々の声をよく耳にします。恒例の行事となった館山フラメンコフェスティバルは、「若い頃は失敗を恐れず、まずは行動に移してみること」を理念として活動されてきた商工会議所青年部の方々から始まったのでした。これからもこのフラメンコフェスティバルの例を見習って、情熱をもって街づくりに取り組む館山の若者像が受け継がれていくといいですね。
学生さんの生の声!
学生さん達による館山フラメンコフェスティバルの合宿は5日間。この間全国から集まった約190名もの学生さん達は、上述したようにたくさんのステージでフラメンコを披露してくれます。
それだけでも怒涛のスケジュールなのですが、実は全国学生フラメンコ連盟(FLESPON)の皆さんはフラメンコの楽しさを伝えに幾度となく館山を訪れてくれているんですね。
そこで、FLESPON事務局長を務められる柴陽子さんに学生さんからみたフラメンコフェスティバルについて生の声をお聞きしてきました。
「私たちにとって館山でのフラメンコフェスティバルは特別な意味をもっています。
一年を通して練習してきた成果を発揮する場所としてはもちろんのことですが、普段他の活動をしていたら決して出会うことのできない全国各地の大学生とフラメンコを通して語り合うことができます。
こうした出会いはとても印象的なもので、先輩たちの多くは卒業してからもフラメンコの繋がりで友情を育んでいたりもするんです。」
「また、このイベントをきっかけにして館山がとっても親しみやすい場所になっています。
なんか突然時間ができた時に、館山いっちゃおー!みたいなノリで来ちゃうことも(笑)。早い人は1年生から毎年来てますから、第二の故郷だという学生もいるぐらいです。
参加した学生たちみんなが思い出の1ページを刻む事のできるようにこれまで頑張ってきました。是非遊びにきてくださいね。」
このFLESPON事務局の学生さんたち。朝始発で東京を出て館山に向かい、一日にいくつもの施設でフラメンコの文化指導を行った後にミーティングを重ね、夜も更ける頃に帰宅して、それからまた資料を作る…という日々を送っているんです。そんな中快くインタビューを受けて頂きありがとうございました。是非みんなでフラメンコを堪能しにいきましょう!
こうした学生さん達と最も密に連絡をとられてイベントを創り上げられ、彼らの頑張りを身に染みて知っている方が館山市生涯学習課の三浦太郎さんです。今回は最後に、三浦さんに学生さん達への労いと応援のメッセージを頂いて締めくくりたいと思います。
【三浦太郎さんからの応援メッセージ】
これまで、フラメンコの担当となって4年目になりますが、大学生が館山市内各所で踊り、奏でるフラメンコによって、子どもからお年寄りまで、観る人の心を打ち、楽しい気持ちにさせてきた光景を、今まで幾度となく見てきました。『館山で自分が一番輝くんだ』という想いと『私たちのフラメンコで観る人を楽しませたい』という気持ちをあわせ持っているフラメンコ学生たちが私は大好きです。
館山合宿まで3週間近くありますが、大学生の皆さんが館山に到着するのが待ち遠しくてなりません。 |
コラム「ハレオとは?」
実は、「掛け声」を意味するこの「ハレオ」も非常に重要な役割を果たしているんですね。代表的なハレオを見てみましょう。オーレ!=最もスタンダードなハレオ。時と場所を選ばずに使えます。
アサー!=「そうだ、がんばれ!」という相手を力づけるハレオ。
ビエン!=「いいぞ!」と素晴らしい演技に対して褒めるハレオ。
グアッパー!ボニータ!=「きれい!」「かわいい!」という意味で女性に対してかけるハレオ。
バモ!=「いこう!」というような景気づけにかけるハレオ。是非今年のフラメンコフェスティバルでは、是非思い切ってダンサーにハレオを掛けてみましょう!
舞台がより一層白熱すること間違いなし!
館山フラメンコ日記2013
館山市のホームページに、2013年フラメンコフェスティバルに向けて寄せた全国の学生さんたちによるブログが公開されています。
他のページには年度ごとのアーカイブなどもまとまっておりますので、より詳しく知りたい方はご覧ください。