なぜ館山に自衛隊があるの?

海上自衛隊館山航空基地

鏡ヶ浦ともよばれる館山湾。
海岸線のほぼ中央にある平坦な埋立地に、自衛隊の基地があります。
なぜ館山に自衛隊があるのでしょう?
今回は館山にある自衛隊基地の歴史と役割について考えてみました。

(2012/06掲載:K)

前身は館山海軍航空隊

館山市にある自衛隊基地。正式名称は海上自衛隊館山航空基地といいます。そもそもここに自衛隊基地が置かれているのは、館山の地理的条件と大いに関係があります。
館山は房総半島の先端に位置していることから、西の三浦半島と並んで東京湾の、つまりは首都防衛の要となる土地です。古いところでは江戸時代末期、ロシアのラックスマンが松前に来航して以来、国防の重要性に気付いた幕府は東京湾に6つのお台場を築きます。そのうちのひとつが館山の洲崎(すのさき)であり、のちのペリー来航によっていよいよ警戒を強めた幕府は7門の砲台を設置。海上の監視が強められることになりました。

昭和5年の本部庁舎

明治へと時代が移ると海防の重要性はさらに高まります。第一次世界大戦を経て、軍事力増強に力を注ぐ日本は館山に航空基地の建設を検討します。そこで白羽の矢が立てられたのが現在館山航空基地のある場所でした。
大房岬(たいぶさみさき)と洲崎に抱え込まれるような形をした館山湾は「鏡ヶ浦」と呼ばれるほど波が穏やかなことで知られます。外洋にも近く、しかも水上機の離着陸にも適したこの場所はまさに航空基地建設にうってつけだったようです。現在基地のある場所は以前は海だったのですが、1923年の関東大震災で地盤が隆起したことによって遠浅の海岸になっていました。そこで、沖合にあった高ノ島(現在の鷹ノ島)を抱き込むような形で埋め立て、基地を建設したのです。そして昭和5年(1930)、館山海軍航空隊は発足します。

出撃前の整列

航空隊はこれから第2次世界大戦終結まで、パイロットの育成や航空機の開発などを担当。多くの軍人がここから戦地へと出撃していったのです。

海上警備隊から館山航空隊へ

館山航空隊開隊記念式典

昭和20年(1945)に終戦を迎えると大日本帝国海軍は解体されます。基地の跡地には、昭和21年2月までアメリカ陸軍騎兵第一師団が駐留したのち、館山航空標識所や農林統計調査事務所が開設されたほか、火災で焼失してしまった安房水産高校も施設の一部を利用しています。
なにせ40万坪という広大な敷地、館山市でも水産業などの産業基地にしてはという意見もあったそうですが、海上自衛隊(当時は海上警備隊)が新たな基地建設の意向を示したために再び航空隊基地を置くことで決着をみます。そうしたなか、昭和28年(1953)7月、館山航空隊設立仮事務所が開設され、同年9月には館山航空隊が正式に開隊しました。その年の12月には盛大な開隊式が執り行われ、すでに配備されていたヘリコプターによる航空ショーなどが開催され好評を博したそうです。
こうして開設した館山の自衛隊基地。現在までの歩みを簡単に見ていきましょう。

昭和28.7.15 館山航空隊設立仮事務所開設
昭和28.9.16 館山航空隊開隊
昭和28.12.1 館山航空隊開隊式
昭和33.12.16 館山術科教育隊新編
昭和35.1.16 館山術科教育隊、下総へ移転
昭和36.9.1 第21航空群新編
第211、第221教育航空隊開隊
昭和40.3.25 小松島航空隊新編 第21航空群隷下に編入
昭和43.11.30 第221教育航空隊 小月へ移転
昭和48.2.20 第121飛行隊新編(第101航空隊内)
昭和49.2.16 第211教育航空隊 鹿屋へ移転
昭和49.11.27 第121航空隊新編
昭和56.3.27 第122航空隊新編 第21航空群隷下に編入(大村)
昭和62.12.1 小松島航空隊新編 呉地方隊へ編入
第122航空隊 第22航空群(新編)に編入
平成1.3.17 第124航空隊新編
平成10.3.20 第124航空隊、第123航空隊に編成替(隊番号の変更)
平成10.12.8 第21支援整備隊廃止、第21整備補給隊新編
平成13.3.24 舞鶴航空基地隊、舞鶴航空分遣隊、舞鶴整備補給分遣隊新編
平成20.3.26 第21航空群部隊改編
第101航空隊、第121航空隊、第123航空隊廃止
第21航空隊(館山)新編
第73航空隊(硫黄島航空分遣隊、大湊航空分遣隊)新編
隷下に編入( UH-60J型 ヘリコプター配属)
舞鶴航空基地隊、第123航空分遣隊、第2整備補給分遣隊廃止
第23航空隊(舞鶴)新編
大湊航空隊廃止、第25航空隊(大湊)新編

海上自衛隊館山航空基地の役割

館山航空隊は戦後の航空部隊としては日本で最初の部隊です。その後組織はめまぐるしく変わってはいるものの、館山の基地は航空基地ということには変わりなく、現在では海上自衛隊最大のヘリコプター基地となっています。ではここで基地の役割について見ていきましょう。
まずは海上自衛隊の編成図をご覧ください。

このように複雑な体系をしていますが、館山の基地を使用しているのは海上自衛隊の航空集団の中の第21航空群というところです。この第21航空群はさらにいくつかの部隊から編制されており、館山を使用しているのは司令部と4つの部隊ということになります。
おもな任務は次のとおりです。

海上防衛・沿岸警備
SH-60

艦載型ヘリコプターの母基地としての役割を担っています。有事には護衛艦にヘリコプターを搭載し、艦艇と一体となって海上防衛や沿岸警備にあたります。

災害派遣
救難訓練

さまざまな災害の際に被災者救助にあたります。昨年の東日本大震災でも被災された方々の救助を行いました。

急患輸送
急患輸送

おもに伊豆諸島や小笠原諸島などにおいて、島内で診療できない急患を本土の病院へ輸送します。都知事の要請により出動するもので出動回数は1500回を超えています。

海外派遣
アデン湾

海賊対処法に基づきソマリア沖アデン湾の安全確保のための部隊を派遣しています。

後方支援

航空機の整備、補給基地としての役割や、航空機の安全な運航をサポートするための航空管制なども重大な任務です。

こうしてみると、単に国防のためだけではなく、有事の際には幅広く活動してくれていることがよくわかりますね。

館山市との関わり

このようにさまざまな任務を帯びた自衛隊基地ですが、館山との関わりはどのようなものがあるのでしょうか? 直接的な館山市との関わりといえば、まずは自衛官の皆さんそのものの存在です。基地で勤務する自衛官の数はおよそ1000名にものぼるとのことで、その家族のみなさんも加えると自衛隊関連の方々だけで館山市の人口の4~5%ほどにも上ることになります。また、以前館山基地に勤務した経験のある方が、除隊後館山に戻ってくるケースも少なからずあるようです。人口が微減し続けている状況下では、その抑制にもひと役買ってくれていることになりますね。

ヘリコプター体験搭乗

また、自衛隊基地は市内で行われるさまざまなイベントにも参加・協力してくれています。たとえば今年の7月1日(日)に開催される「たてやま海まちフェスタ」では基地の一般開放を行います。当日はヘリコプター体験搭乗、フライトシミュレータ体験、「交通艇」乗船体験などの体験型イベントのほか、ヘリコプターの地上展示や館空カレーの販売など各種イベントを計画しています。また今年は7月8日(日)に開催される館山わかしおトライアスロン、通称「タテトラ」では、競技会場として基地の一部を開放してくれています。このほかにも、ヘリコプターの編隊飛行を見られる秋のヘリコプターフェスティバルや、冬のクリスマスコンサートなどさまざまなイベントを開催しています。

観光地?としての自衛隊基地

館山航空基地資料室

このように館山市民と深く関わりのある自衛隊基地。あまり知られていないようですがイベント以外でも一般の方の基地見学も受け入れてくれているんです。
こちらは事前申し込みが原則となっていますが、実際に使われている航空機や資料室などを見学することができます。資料室には膨大な数の自衛隊関連の模型や自衛官の制服の変遷を示す展示、基地の歴史紹介パネルなどがあり、自衛隊や館山航空基地についての知識や情報を多角的に得ることができます。また、制服を着用しての撮影コーナーや部隊ワッペンの販売なども行っており、軍事マニアや航空マニアならずとも楽しめる内容です。実際、自衛隊基地見学をコースに組み込んだツアーも数多くあるそうで、そういう意味では館山市の観光素材のひとつともいえそうです。

制服着用コーナー

敷居が高いと思われがちな自衛隊ですが、この機会に一度じっくりと基地について考えてみてはいかがでしょうか。自衛隊や基地への印象が少し変わるかもしれませんね。

たてやま海まちフェスタ

日時:毎年7月に行われます。
場所:渚の駅、海上自衛隊館山航空基地など

ヘリコプター体験搭乗の事前公募

当日体験搭乗いただく方を下記要領にて事前公募中!応募締切日は6月19日(火)必着です。
対象:小学生~26歳まで(小学生は保護者1名同伴での搭乗が必要となります)
方法:お一人様1枚の往復ハガキに、住所、氏名(ふりがな)、年齢、学年、電話番号、保護者氏名(小学生のみ)を記入のうえ下記まで郵送願います。
郵送先:〒294-8501 千葉県館山市宮城無番地 海上自衛隊 第21航空群司令部 広報室
問合せ先:第21航空群司令部 広報室0470-22-3191(内線:208)
自衛隊基地一般見学
基地内は事前予約により一般の見学も可能。予約は希望日の2週間前までに!
見学対応時間:月~金曜の9:00~12:00、13:00~16:00(土・日曜、祝日は要問合せ)
所要時間:上記時間内で1時間~1時間30分程度(人数によって多少変動あり)
予約・問合せ先:
〒294-8501 千葉県館山市宮城無番地 館山航空基地 第21航空群 司令部・広報室
電話0470-22-3191(内線208) (電話は平日8:30~16:00にお願いします)
メールアドレス:21aw-ckouhou@inet.msdf.mod.go.jp

海上自衛隊第21航空群ホームページへ