房総半島南部では、生垣で屋敷の周囲を囲んだ集落景観が見られます。居住空間を四方で囲んだ生垣には、主に20mほどの樹高になり千葉県の県木でもあるイヌマキが使われています。イヌマキは房総半島から沖縄諸島南端まで分布するマキ科(針葉樹)に属する暖地性の種であり、房総半島の分布が北半球の北限域といわれます。昔から多くの家がイヌマキやモチノキなどの生垣をめぐらせた理由は、防風や防砂の役割だけでなく、防暑や防寒のため、さらには防火や外敵防除の機能をもたせたからといわれています。なかでも冬季に目立つ西風の時期は、塩分を含んだ強風が樹木の植生に影響があり、防風効果が高いイヌマキが使用されています。イヌマキの生垣は「ちば文化的景観」にも認定され、地域の貴重な財産になっています。