富士山(鋸南町)

日本を代表する霊峰富士山。ここ房州から眺める富士は、空気の澄み切った冬の朝にはひときわ鮮明に、その雄姿を見せてくれます。
「田子の浦ゆ うち出でてみれば真白にぞ 富士の高嶺に雪は降りける」
これは、奈良時代の歌人、山部赤人が富士を詠んだ有名な歌です。赤人の生没年、経歴ともに不詳ですが、下級官人であったと思われ、聖武天皇の紀伊、吉野、播磨などの御幸にお供して歌を詠んでおり、宮廷歌人として活躍しました。旅の歌、特に叙景歌にすぐれ、万葉集の編者、大伴家持は、赤人を柿本人麻呂とともに「山柿の門」として尊敬していたほどです。
その赤人が詠んだこの歌の田子の浦とは、古来、駿河国(静岡県)蒲原、由比あたりの海岸が定説とされてきましたが、いや房州勝山海岸であると新説を発表した人物がいます。江戸時代後期の神代学者、山口志道です。