館山市大網には、慶長8(1603)年、里見義康が帰依したという雄誉霊巌上人が創建した浄土宗の大巌院があります。この寺の山門のそばには、元和10(1624)年に建立した高さ約2m、幅約50cmの安山岩製の四面石塔と呼ばれる四角柱の名号石塔があります。この石塔の東西南北の四面には、和風漢字・インド梵字・中国篆字・朝鮮ハングルで南無阿弥陀仏の名号がそれぞれ刻まれ、また石面の一つに山村茂兵夫妻が逆修のため寄進したことや雄誉の花押が刻まれています。ここで注目されることは、刻字されているハングル字形が現在、使用されていない創成初期の東国正韻式のものであり、韓国ではまだ報告されていない貴重なものです。雄誉上人の生涯や石塔に刻まれた偈文などから考えると、秀吉の朝鮮侵略で拉致された人びとを供養し、平和祈願のために建立したと思われます。昭和44(1969)年に千葉県指定文化財になっています。