館山市沼にある総持院の裏山の大寺山中腹には、高さ3m、幅6m、奥行25mの海食洞穴があります。平成8(1996)年から3年間の発掘調査により、この海食洞穴が古墳時代に舟葬墳として使われていたことが確認されました。ここには12基を超えるスギの木でつくられた丸木舟を使った舟棺が発掘され、舟葬という葬送儀礼がおこなわれていたことがわかりました。舟棺からは、短甲などの武具をはじめ、大刀・鉄剣などの武器、漆塗りの木製盾など、大型古墳と同じような副葬品が出土したことで、5世紀頃から約250年間にわたって、館山には葬送儀礼に海食洞穴を利用した人びとがいたと思われます。北欧のバイキングのような舟葬墓があったことが初めて確認されました。古墳時代において漁撈や交易をおこなっていた人びとのなかには、独自の墳墓をもって海を意識した死生観をもっていたことがわかります。昭和47(1972)年に館山市の指定文化財になりました。