約6,000年前の縄文期は、現在より2~3m海面水が高かったといわれています。たびたびの巨大地震により地殻が大きく隆起し、房総半島南部では海が入り込み、平野部の背後にあった崖が直接海に接したことで波の侵食により海食洞穴がつくられました。館山には11基の海食洞穴があることが知られていますが、鉈切洞穴は館山湾に面した標高約25mの海岸段丘上にあり、最高部の高さが約4m、幅は開口部で約6m、奥行きは約37mと大きい洞穴です。縄文後期から古墳期まで使用され、その後は漁民たちが海神を祀る神社となりました。縄文期の人びとが使った鹿角製釣針や銛をはじめ、マダイやマグロなど魚骨47種、アワビやサザエなどの貝類68種が出土しているので、海岸部だけでなく沖合での漁撈があったことがわかります。出土した縄文土器などから対岸の三浦半島の影響や、外洋漁撈文化の一端を知ることができます。昭和42(1967)年に千葉県指定文化財になりました。